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9月米雇用統計が弱含んだにもかかわらず、年内利上げのコンセンサスは揺いでいない。米国連銀の総裁達は、相変わらずタカ派の発言を継続しているし、イエレン議長も夏あたりから「年内利上げ」を確約するような発言を繰り返した。しかし、FRBは9月利上げを見送ってしまった。明らかにFRBは昨年同様に利上げのタイミングを逸したのだ。

昨年は利上げするなら6月しか無かったと思うが1-3月期GDPがマイナスになったことで躊躇った。そして9月は最後のタイミングだったが、8月の中国金融不安による株価急落でまたしても躊躇った。結局足元の景気に陰りが見えていた12月に0.25%の利上げを行って、年明けから原油価格と株式市場は急落したのだ。最低でも年4回の利上げを公言していたFRBは、3月に利上げを見送り、そして5月の雇用統計の大幅な減少で6月も見送り。そして最後のチャンスであった9月を見送ってしまった。
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このような政策に対し、FRB理事会のタカ派メンバー達は相当のストレスを抱えているに違いない。そして、9月見送り以降ますます強硬な発言を繰り返している。その理由は米国における「未曾有の債券バブル」に対する恐怖と旺盛な個人消費の裏にあるファイナンス過多であって、ほとんど上昇の兆しすらないCPIを見てもインフレの可能性を根拠にしていないことは明白だ。過度な金融緩和と規制の強化によって、過剰流動性は債券市場になだれ込んだ。そしてサブプライム危機以前のバブル水準を遥かに上回るデリバティブ取引が行われ、ハイリターンのジャンク債やサブプライム・カーローンに対する投資が行われている。

その状況でドイツ銀行危機やウエルズファーゴの不正事件が噴出して、債券市場に緊張が走った。ひとたび金融機関の破たん劇があれば、債券市場は瞬く間に連鎖する。少なくともそれこそが過去の教訓であるはずだ。
だからこそ、金融政策によって今のうちに債券バブルを鎮静化しておきたいというタカ派の意見は真っ当であるのだが・・・どうやらFRBはまたしても利上げタイミングを逸してしまった。
その理由は米国経済の後退が鮮明になってきたからだ。
米GDP
上記にグラフは米国の2013年からの四半期ごとのGDPの推移だ。すでに米国GDPは昨年10-12月期から3四半期連続で年率2%に遠く及ばない0.9%、0.8%、1.1%という低成長に甘んじている。特に今年の4ー6月期は、個人消費が著しく伸長したにも関わらず1.1%という低水準に甘んじた。

5四半期連続で在庫投資がマイナスということで、今後総輸出に大きく影響する懸念がある、3四半期連続で設備投資がマイナスで企業業績に対する懸念がある、大きく伸びた個人消費の反動減の懸念がある等々を考慮すれば、本年度7-9月期、そして10-12月期のGDPもまた大きな伸びは期待できないし、むしろ悪化の可能性が濃厚になっている。つまり、FRBはこのような実態経済の状況で12月利上げを選択出来るのか?という疑問が湧いてくる。

仮に7-9月期のGDPが1%を割り込むようなことになれば・・・12月の利上げは文句ないしに消滅するだろう。いかに雇用重視の姿勢を打ち出しているイエレンと言えど、1%を割り込むような経済成長の最中に利上げをするとは考えられない。たとえ10-12月に改善の兆しが見られたとしても、その腰を折るようなことは避けないわけには行かなくなる。

今後の状況次第だが、10月28日に発表の7-9GDPの数字如何では、急激な円高があり、その場合は容赦なく¥100を割り込むだろう。少なくとも為替は、10月28日までは¥102~¥103の小動きではないかと思うが、今回の9月雇用統計は(現時点では利上げに影響なしとされているが)考えた以上にジワジワと効いてくるかもしれない。
世界経済のけん引役である米国経済がこの有様ということは、危機的状況と言っても過言ではなく、当面楽観出来る状況はこない。

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