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株式市場の「良好な地合い」というのは、「イベントに素直に株価が反応する地合い」だと思います。一方的に上昇する相場ではなくて、その時々のイベントを一つ一つ織り込む動きが重要で、そうすることで株価の信頼性が担保出来るわけです。一方、将来に株価上昇の兆しがはっきりと見えるとか、逆に重大な懸念があるような場合には、目先のイベントにはさほど反応することなく推移します。この場合は個別株でいうと企業の実態と乖離する方向に動くこともしばしばで、かなり難しい地合いと言えますね。たとえば、今年に入ってWTI原油価格が大きく下落しましたけど、こういう将来的な懸念が発生すると、株式市場は頭を押さえられ、企業のファンダメンタルズは悪くないのに、予想外に売られました。そう言う時には「地合いが悪い」と感じますよね。

その意味では、現状は決して「良い地合い」ではないです。目先の企業決算よりも将来懸念が勝ってる状況で、それがうねりのように株価を動かしてしまいます。


1)為替(ドル円)
今年2月に米国では、「貿易相手国の為替操作抑止などを目的とする法律」が成立しています。これは本来はTPP議会承認のための前提として提出されたものですが、米国内にはドル高に対する不満がかなり大きいと思われます。そこで、G20でのルー財務長官は麻生大臣の為替介入示唆を牽制(拒否)したんですね。その報道が今回の円高の火種になってます。つまり法案成立で円安に傾いた為替が、円高に向かうと判断した投資家の円買いポジを史上最高水準に押し上げた。そして日銀の金融緩和期待で切り返した円の買いポジションがこの報道で温存されていた、という状況でした。そこに日銀の「現状維持」発表で、急激な円高を誘発したのでしょう。なお¥100/$くらいになると予想したのは、その辺りがドル円の購買力平価の均衡点だからですね。

昨日麻生大臣は次の様な「口先介入」を行いました。
麻生副総理 急な円高の動きをけん制する考え協調

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今の為替の位置ならば、この発言でショートカバーが出てもおかしくないですから、「口先介入」のタイミングは(珍しく?)基本通りですかね。
ただし、米側の圧力によって今回の日銀追加緩和が封じられたというのは、どうやら事実と見て間違いなく、その状況で実際に為替介入するかどうかは分かりません(レートチェックは入った見たいですけど)。いずれにしてもドル円が再び日本株の変動要素になったことは間違いないですね。

2)5月10日パナマ文書公開
国際調査報道ジャーナリスト協会によっていよいよ「パナマ文書」の調査結果が公表されます。この解析には約400名の各国ジャーナリストが携わっています。ということは現時点ですでに情報は出回っていると考えたほうが懸命で、なおかつ株式市場に影響が出ていないところを見ると、大きな変動はないかもしれません。がしかし、関係国では個別に大きな問題になっている以上、徐々に国際的なモラルハザードとして広がりを見せることは間違いないでしょうね。
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個人的には、この問題は情報の解析とともに企業や有名個人のスキャンダルへと発展しながら徐々に大きなうねりとなると思います。その理由は、現在の株式市場の動的資金の大半はタックスヘイブンからの投資だからです。主要ファンドの多く、そしてヘッジファンドの大半がタックスヘイブンからで、場合によってはこの資金が停滞、または細る可能性もあるからです。特に、キャメロン政権が危機的状況に追い込まれているイギリスでは、批判が強まる可能性が大いに有ります。6月にはEU離脱の国民投票もあり、大きな懸念材料になることは間違いないですね。その株式市場への影響がなかなか読めないですね。

3)5月ファンド決算売り

「セルインメイ」の根拠は米国系ファンドの中間決算(6月)を控えたポジション調整が5月半ばから行われると言う意味です。もちろん、ファンドだけではなく、国内機関投資家も年末に向かってのポジっション調整に動きやすい月です。なので、ただでさえ5月の値動きは荒くなるんですね。ポジション調整なので、銘柄によっては理不尽な売りモノが出やすいし、また理由のない買いモノもでます。個人投資家が翻弄されやすい株価の動きになるわけですが、今年の日本市場は嫌な地合いですから、相当に危険と思いますね。

4)自動車業界の動向

三菱自動車問題に端を発して自動車業界が揺れると思います。国土交通省は三菱自動車に対し、エコカー減税の補助金変換を求めると同時に、自動車燃費の検証方法を検討せざるを得ない状況になってます。これがもし改正された場合、各メーカーの燃費表示は大幅に悪化する可能性が高い。つまり国内販売にとっては相当にネガティブな要素になりますね。また為替敏感セクターであり、アベノミクスの基幹産業でもあるので、ここが崩れるとなると日本株への影響は計り知れないです。その意味ではトヨタ株を指標株としてウオッチすることが必要と思ってますね。

5)WTI原油価格
2月の$26/バレルを底値として順調に戻り相場となったWTI原油ですが、ここにきて戻りは一杯となってます。まず$50タッチは難しいく、5月は反転して底値を伺う展開になると思います。これは日本株と同じですが、反転上昇の理由はショートカバーしかないんです。$100から$26までの壮大な下落相場を演じたわけで、この戻りが$50というのは極めて真っ当な値動きとも言えますが、問題なのは、この間に主要原油は減産どころか大いに増産に傾いているということなんですね。
原油日足
今回の下落で、まともに生産できなくなった産油国があり、そのシェアの奪い合いが続いています。そして価格が上昇すればするほどに増産したいのは、人情ですからねぇ・・・。この5月にはシェールの増産も同様に大きく増えるはずで、そうなればたちまち供給過剰に陥りますので、原油価格は下落転換しますよ。これがダウの頭を押さえる展開を予想しますね。ただし、すでに原油価格は株式市場への影響はかなり薄くなってますので、$35以下にならないとさほどのネガティブファクターにはならないと思いますけど。資源株は要注意じゃないでしょうか。

5月相場は、こうした株式市場のうねりがあって、この中で個別のイベントがあると理解した方が簡単です。そして、基本的な動向としては、ダウは一旦天井を打った可能性が高く、ドル円は巻き戻せても¥110は無理のような気がしますし、日本経済は今回の企業決算織り込みで、下値を探る弱気相場だということですね。そこに、個人の勝負何処を見いだすわけです。俺としては、もう少し別の見方をしているので、機会があったらこの連休中にでも、書きたいと思います。

日本株を読め!【4月30日版 前篇】
>5月の大荒れ相場を制するために!気合いを入れて書きました。

安倍内閣賞味期限切れ その3
>日本経済衰退の原因は「日本の癌」にあり!是非読んでみてください。