大いなる幻想
いま、株式投資をしている個人投資家の多くは、正直強気になってるだろうと思う。なぜなら、日経平均株価があまりに底堅い動きで、この1か月半の間、下落するといわれつつ真逆の動きをしているからかも。長期間にわたってもみ合いの中にいて、それがなんとなく上放れするような、チャート形状に変わりつつあり、また株価の位置も三線上で非常に堅調だからだ。これでは強気になるのは必然だろうし、逆にこの間、売り方は(自分も含めて)いいところなし。大きく負けることもないけれど、明確な勝ちもなし。時折海外勢があきらめてショートカバーしたりすると、ザラ場でも急騰の動きになってしまい、つい釣られてしまうからね。
だが、内心では日々、この相場は戻り限界に近付いていると、そしておそらく戻り高値を明確に抜けるのではなくて、抜けたとしても三尊、微妙ならWトップになると読んでいる。
株価が戻りいっぱいだと言うことは、株式投資の環境が我慢の限界に達しつつあるということ。強気派の意見は、今の株式市場は次の3つの上昇要因があると言っている。
1)FRBの金融緩和姿勢
2)11月3日の米大統領選挙
3)新型コロナワクチンの進捗
だが、この3つのすべてが、状況が変われば大きなマイナス要因になり得る。
まず1)ではFRBが金融緩和を余儀なくされる裏側には、景気の見通しが不透明であることの証明ということ。投資家は目先の政策に反応して株価を押し上げるけれど、現状の金融緩和レベルを考えたとき、これ以上の政策はつまり、経済が将来危機的状況から脱することができないということを意味しているわけだから。
次に2)の大統領選挙で、劣勢と報じられ弄りまくられてるトランプ大統領は、再選のために株価を押し上げざるを得ないと強気派は考える。だが、大統領選挙の核心は相手が痴呆症のバイデンであるということ。しかも、バイデンは親中派であって、クリントン夫妻、オバマ大統領と続く心中路線を継承しおいしい思いをしてきた人物である以上、今の米国世論はそれを許せるはずがない。
また中国憎しでまとまった米国世論は、対中強硬姿勢を歓迎するわけで、緊迫した局面になると必ずトランプを支持するし、そこをトランプは必ず利用してくる。まさに「強いアメリカ」と連呼するだろう。なので、もはやトランプは株価を持ち上げようなどと考える必要がない。
最後に3)だが、株価を持ち上げようとしているのはウォール街だ。とにかく現在激増中の新型コロナ感染者数を巧みに利用して、新薬、ワクチン開発を煽りまくって株価を吊り上げている。しかし、そうした市場の反応は、完全に提灯に飛びつくものだ。少しでも知識のある人ならば、ワクチン開発がどれほど困難な仕事であるか理解しているだろう。
今回の新型コロナウイルスは、インフルエンザと同様のRNA型ウイルスであって、短期間のうちに変異を繰り返す。基本的にワクチンが万能でない限り、完成したとしてそれが効果的であるとは言い切れないし、むしろ効果のある例は少数派にとどまる確率が非常に高い。
なので、ワクチンが根本的な解決策にならないのは、インフルエンザと同じだろう。ならばギリアドのレムデシビルのような治療薬のほうが、タミフル同様に可能性は高いと思うけれど、それでも5割は途方もなく厳しい数字のはずだ。
なので、現在の米国での感染者急増をこのまま放置することは非常に危険で、感染者が増えれば増えるほど、対中感情が悪化してゆく。
1)~3)をポジティブに考えて戻り相場を演出したはいいが、すでに株式市場をめぐる情勢はネガティブ一色に染まろうとしてる。現時点では決算の真っ最中のために安易な動き方はしないかもしれないが、その先には危機感満載のの状況が待ち受けているはずだ。
なので、この先株高は大いなる幻想だったと気づくはずだ。